運動指導者として覚えておきたい各疾患への医学的基礎知識(健康運動指導士資格更新研修を受講して・その②③)
12/15健康運動指導士・資格更新必須講座受講@大分
下記のうち講座②・③について
個人的に覚えておきたいと思ったものをシェアします。
ご興味ある方ご活用ください。
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健康運動指導士 資格更新必須講座
日時:2018年12月15日10:00~16:20
会場:大分県消費生活・男女共同参画プラザ
==プログラム==
①10:05~11:35
「『 健康日本21(第二次)』を中心とする国の施策の現況及び健康運動指導士の役割」
増田 和茂 氏 (公財)健康・体力づくり事業財団 常務理事
(この枠のまとめはこちら)
②12:30~14:30
「認知機能低下を予防するための身体活動とその効果」
金 憲経 氏 東京都健康長寿医療センター研究所 研究部長
③14:50~16:20
「各疾患者への運動療法、服薬者の運動と注意点(高血圧、糖尿病、虚血性心疾患、脂質異常症)」
勝川 史憲 氏 慶應義塾大学スポーツ医学研究センター 教授
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②「認知機能低下を予防するための身体活動とその効果」
金 憲経 氏 東京都健康長寿医療センター研究所 研究部長
◆日本の高齢者(65歳以上)のうち
前期高齢者(65~74歳)健康的・活動的・ネット使える・社会との関わりあり
後期高齢者(75歳以上)フレイル(虚弱)・要介護状態・サルコペニア(筋肉減少症)・
認知症(認知機能低下)
⇒特に後期高齢者への対策が求められている
◆要介護になる要因
前期高齢者:脳血管疾患が多い
後期高齢者:フレイル・転倒骨折・認知症が多くなる
◆「健康長寿のための12か条」(東京都健康長寿医療センター研究所)
10. 認知症
:よく食べ、よく歩き、よくしゃべり、認知症を防ごう
↑栄養 ↑運動 ↑社会参加
◆海馬:記憶・空間学習能力に関わる機能を司る。虚血に対して脆弱
⇒海馬への血流を増やす事が有効
◆認知症(Dementia)とは(厚生労働省Webサイト)
「生後いったん正常に発達した種々の精神機能が慢性的に減退・消失することで、日常生活・社会生活を営めない状態」
認知機能障害(Cognitive Impairment: CI)とは
認知機能検査(MMES)24点未満
認知機能低下(Cognitive Decline: CD)とは
追跡期間中にMMESが3点以上低下
◆脳の質量:1,200~1,500g、血流:全身の25%
◆アルツハイマー型認知症(認知症の60%)では以下が見られる
・脳の萎縮(特に海馬)
・脳内の老人斑
・脳神経の神経原線維変化
・脳内神経細胞間の連結の消失
アミロイドβが蓄積すると上記が起こる。発症前から蓄積始まる。
蓄積度とMCI(軽度認知障害)出現度は人によって差がある。なぜかは不明
◆年齢ともに脳内血流量・脳細胞数は減少する。
認知症進行例では軽症例に比べ特に海馬の血流量の差(減少)が見られる。
◆認知機能低下との関連の一つとして注目される「歩行速度」
⇒秒速80cm以下(2.9Km/h)で認知症のリスクか
さらに歩幅(スライド)にも関連あると考察される
⇒歩幅に関わる体幹・腸腰筋等の強化が有効?
◆厚生労働省の取り組み=MCIの予防
MCIに対し適切な支援をすることで25%は正常に戻る
◆認知機能の評価法(臨床法以外のもの)
・MMSE:認知機能評価として最も普及している方法
時間の見当識・場所の見当識・単語の即時再生・計算・単語の遅延再生等、11項目から構成。30点満点27点以上正常
・MoCA-J(「モカジェイ」):言語(例えば「さ」から始まる単語を1分間で上げる)等
8(?)項目からなる。
・ウェクスラー記憶検査法-ロジカルメモリ(LM):エピソード記憶の評価課題として取り上げられる
直後再生(LM-I)・遅延再生(LM-II)
・トレイルステッピングテスト(東京都健康長寿医療センター研究所)
⇒体力テストによる認知機能評価が可能かどうか分析中
◆認知機能改善を目的とした身体活動・運動の効果に関するレビュー多数あり
・運動習慣との関連
・有酸素運動と関連(⇒クレーマーによる報告=Kramer et al, Nature 1999)
・「噛む(特に奥歯)」との関連
・野菜・魚の摂取
・ワインの摂取(ビール・ウイスキーでは低下。ただし社会的地位の高さと比例している可能性もあり直接の関連性は不明)
・社会的な繋がり度との関連
・知的行動習慣(文章を読む・楽器の演奏・チェスなどのゲーム等)
◆認知機能が低下している人は下肢筋力が低下している⇒転倒リスク↑
◆「身体活動」とは(2010年WHO)社会活動に関わる全ての身体の活動のことを言う
◆認知機能低下を予防するためにはBDNF(brain-derived neurotrophic factor=脳由来神経栄養因子)上昇がカギ
・働き
神経細胞の発生・成長・維持・再生を促進させる
1)脳内における神経回路網の形成や発達、生存に需要
2)シナプスの可逆性に関与し、記憶や学習の形成において重要な役割を果たす
・特徴
海馬に高濃度存在する(海馬の大きさと関連)
血中BDNF水準はうつ病・認知機能障害・糖代謝異常と関連
◆「FINGER研究」世界的に知られる認知症予防の介入研究
2009~2011年フィンランド「高齢者の生活習慣への介入による、認知機能障害予防の研究」英語タイトルの頭文字をとって名付けられた。60~77歳1260人
・結論:運動指導・食事指導・認知訓練・血管リスク管理の組み合わせが効果的
◆フレイルは認知症の関連あり
フレイルは認知症になりやすい
◆「認知的フレイル」身体的フレイル+MCI(認知症ではない状態)
認知的フレイルへの対策が求められる
※投稿中(金講師)
◆認知症予防のカギはMCIをいかに早く見つけて対処するか
◆身体活動はDementia Typeに関係なく効果的
◆有酸素運動単独より筋力トレーニングとの組み合わせも推奨される
◆高齢者には週150分以上の身体活動を奨励 少なくとも75分はややきつく感じる身体活動が必要
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③「各疾患者への運動療法、服薬者の運動と注意点(高血圧、糖尿病、虚血性心疾患、脂質異常症)」
勝川 史憲 氏 慶應義塾大学スポーツ医学研究センター 教授
◆上記に関する薬そのものは近年大きく変わっていないが、使い方が変化している
◆アメリカスポーツ医学会:運動処方の指針
ACSM’s guidelines for Exercise Testing and Prescription
・運動に伴う心イベントリスクの考え方(中高年)
急性心筋梗塞とそれによる突然死が主体
特に運動習慣がない者が急に高強度の運動を始めた場合
・定期的な運動習慣はこのリスクを低下させる
・メディカルチェックの上、中等度の強度から始めることでリスク低下が期待できる
◆2014 PAR-Q+ 概要
⇒以前の「PAR-Q」から改正
※Physical Activity Readiness Question=運動実施の適正を判断するための質問
「General Health Question」(7項目)Q2:腎疾患のことを視野に入れたQ
全てNoなら ↓1つでもYesなら
↓ 「follow-up Q I ・II」へ(計10項目)
↓ ↓全てNoなら
「2014 PAR-Q」の指示へ
◆運動参加のアルゴリズム(アメリカスポーツ医学会 2015)概要
◆血圧 180 / 110以上は薬でコントロールしてから運動開始
※その他各種ガイドライン参照
◆定期的な運動の意義(糖尿病)
・血糖コントロール目的 I型☓ II型◯
・レクリエーション目的 I型◯ II型◯
・他の心血管病予防目的 I型◯ II型◯
◆血糖コントロールの目標(HbA1c) ※6.4%を目安にするのではなく
・血糖正常化を目指す際の目標:6.0%未満
・合併症予防のための目標:7,0%未満
・治療強化が困難な際の目標:8.0%未満
◆服薬者への運動指導上の注意(糖尿病治療薬)
・αグルコシターゼ阻害薬(α-GI):二糖類の分解を抑制する。高齢者に多いインシュリンの出が悪いタイプに処方される。低血糖時にはブドウ糖の摂取が必要
・SGLT2阻害薬:腎での再吸収を阻害による尿中ブドウ糖排泄促進する。脱水になりやすい。熱中症・起立性低血圧に注意。水分補給
・インスリン:運動時には原則腹壁に注射する
・スルフォニル尿素(SU薬):インスリン分泌促進。低血糖リスクあり。低価格。健康保険制度がある日本では選択上位にはない。
◆服薬者への運動指導上の注意(高血圧治療薬)
・カルシウム拮抗薬・α遮断薬:運動時の心拍を低下・上昇(種類のよって異なる)させるため、心拍数が運動強度の指標とならない。自覚的運動強度(RPE)などを参考にする。運動後の急な血圧低下を避けるためクールダウンを十分に行う。
・β遮断薬:高血圧に対しては第3、第4選択、ただし狭心症・不整脈・心不全にも心拍を抑える目的で用いられる。心拍数が運動強度の目安とならない。
・利尿薬:脱水に注意
◆高血圧治療ガイドラインはまもなく改定予定
◆脂質異常症について
・「Non-HDLコレステロール」⇒脂質異常症診断基準に登場
・中性脂肪へは服薬よりも運動習慣改善
・LDLコレステロールは服薬が効果あり(運動が関与しない場合もある)
◆高尿酸血症について
・高強度の運動は尿酸値を上げる。運動中の水分補給必須
・服薬に関して基本特別な配慮不要
以上です。
※記載内容は津野個人の解釈も含まれます。
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