可動域の話

フィットネスインストラクターの穂積典子です

 

今日は関節可動域について考えたことを、少々綴らせていただきます

少々長文となりますので、お忙しい方は、Bookmarkして時間のある時にじっくりお読みください

 

関節可動域とは、文字通り関節が動く範囲を表します

身体の各部位の関節ごとに、正常な可動域の範囲というものがあって、例えば、肘関節なら伸びた状態を0度として、そこから150度くらい曲げられるとされています

この可動域には、実は2種類あるのです

能動的可動域受動的可動域です

聞き慣れない言葉かもしれませんね

能動的可動域とは、自分の意思で他の力を借りずに動かせる範囲を示します

この自力というのは、その関節に関わる筋肉以外の力は借りず、という意味なので、例えば太腿の前側をストレッチするときに、足をつかんでかかとをお尻に引き寄せますが、これは手で足をつかむという、膝関節運動には関係のない部位、筋肉の力を借りでいるので、自力ではなくなります

そう考えると、私たちがやっているストレッチのほとんどは、受動的可動域を広げるものです

それはそれで柔軟性の維持や筋の疲労回復などに効果があると思います

ただ、能動的な可動域に全くフォーカスしなくていいのかな?という疑問を常々感じていました

例えば、変形性膝関節症などの障害がない限り、健康な方なら正座ができますね

この時、踵はお尻についています

では、片脚立ちになり片方の膝を曲げていき、踵がお尻についた状態をキープできますか?

おそらくほとんどの方ができないと思います

私の場合、エアロビクスのステップの一つ、レッグカールをやる時などは、膝を曲げて勢いよくかかとを後ろに蹴り上げるので、一瞬かかとがお尻につきますが、つけままキープするのはなかなか難しいです

正座ではかかとがお尻につくくらい膝が曲がるのに、空中で膝を曲げて踵をお尻につけようとすると届かない

この違いがまさに受動的可動域と能動的可動域の違いなのです

正座をするときは、下腿を床にそろえて、その上から体重をかけた状態で膝を曲げていくので、踵がお尻に食い込むくらいまで曲がります

これは、自分の体の重みという、直接膝関節の屈曲には関与しない力が働いたためです

ところが、レッグカールのように立ったまま片脚の膝を曲げるときは、このような外力が作用せず、膝関節の屈曲筋群であるハムストリングスの力だけで曲げるので、正座の時ほどの可動域が得られません

筋肉には、長さー力関係というものがあり、関節運動が何も起こっていない状態の長さ(静止長)よりも引き伸ばされた方が強い力が発揮できます

(社団法人全国柔道整復学校協会監修 生理学 改訂第3版 南江堂 より引用)

一方で筋収縮が起こって短くなるにつれて、発揮できる力は低下していきます

膝関節の屈曲筋群であるハムストリングスの場合は、股関節を屈曲して膝を伸ばした時に、静止長よりも引き伸ばされた状態になります

わかりやすく例えると、椅子に座って脚を水平に伸ばした姿勢です

トレーニングをする方なら頭に思い浮かんだかもしれませんが、これはハムストリングスを強化するレッグカールマシンのスタート姿勢と同じですね

このポジションが最も効率よくハムストリングスの筋力を発揮できるのです

一方で、膝を曲げていき膝の角度が鋭角になるにつれ、例の長さー力関係に従って発揮できる力は低下します

そして、ある程度短縮したところで、ほとんど力が発揮できなくなる、つまりそれ以上は筋力だけでは曲げられなくなるのです

この、受動的可動域と能動的可動域の差は、関節によっても異なるし、個人差もあると思います

 

で、ここからは私の考えなのですが、能動的可動域と受動的可動域の差が大きいほど、怪我のリスクが高いのではないかと思います

能動的可動域の範囲で動いている限りは、これは自分の筋肉で動きがコントロールされていると考えられます

しかし、何かの弾みでこの範囲を超えて関節運動が起こった時、関節にはかなりのストレスがかかるのではないかと思います

ストレッチでも、手で体の一部を押したり引いたり、あるいは壁や床などに体を固定させて外力を加え、受動的な可動域まで筋肉を引き伸ばすことがありますが、これはゆっくりと力を加えていくので、関節へのリスクは少なく、それを上回る筋肉のリラックス効果や血行促進効果が得られるはずです

でも、急激に可動域を広げようと勢いや反動をつけたりすれば、リスクの方が上回ります

また、誤った着地動作や転倒などのアクシデントで、思わぬ外力が関節に加わった時なども、能動的可動域を超えて関節が動き、筋や腱の損傷、脱臼などの怪我につながります

日ごろストレッチやヨガなどのエクササイズで柔軟性を高めることは、大切なことだと思いますが、それと並行して、可動域を大きく使った筋力トレーニングも必要なのだと、改めて感じます

筋力強化を伴わない柔軟性の向上は、実は危険をはらんだものだと再認識させられます

 

ちなみに、柔軟性に優れている体操競技の選手やバレエダンサーなどは、おそらく能動的可動域=受動的可動域なのではないかと思います

そうでなければ、あの演技は不可能ですから

 

最後までお読みいただき、ありがとうございました