定常状態

フィットネスインストラクター野穂積典子です

 

グループエクササイズの指導を始めて、27年目となりましたが、指導をスタートした頃と変わらず,今もエアロビクスとステップエクササイズを中心に活動しています

どちらも有酸素運動プログラムとして紹介されていますが,それがちゃんと有酸素運動として,適切な運動強度を保てるようプログラムを作成、指導できるかどうかが,私たちインストラクターの腕の見せ所です

特に、基本のステップにいろいろなアレンジを加え、さらにそれらの動きが幾つも組み合わさって構成される、中級以上のコンビネーションでは、動きの学習過程でも極端に運動強度が増減することなくレッスンが進行するのが理想です

中上級クラスのレッスンで、かなり複雑な動きであっても、さまざまなテクニックを駆使し、足の動きを止めることなくコンビネーションを完成させることができるのが,エアロビクスインストラクターならではのスキルだと、誇りに思っています

これは、私が実際にやった45分の初中級エアロでの脈拍数変化です

私自身が指導しながら計測したものなので、必ずしも参加者の方が同じような傾向を示すとは言い切れませんが、全くの初心者で全然ついてこれなかったと言うことがない限り,これに近い変動を示すものと考えられます

はじめの10分くらいで一度大きく脈拍数が上がっていますね

この脈拍計は、腕時計式のものなのですが,手首で脈を取るせいなのか、たまにこのように実際の運動強度よりもかなり高めと思われる数値を示します

ウォーミングアップでは、上肢の関節可動域を広げていくため、挙上したり回したりと、かなり大きな上肢運動が含まれます

これは私の推測ですが,この上肢の動きによってノイズが生じ、実際の脈拍よりも大きな数値が記録されてしまうのではないかと思います

直接胸にセンサーを当てて心拍数を計測する方法よりは、誤差が出やすいのが欠点ですが、腕時計タイプは装着が簡単なので気軽に測定できるのがいいですね

さて、肝心なメインパートでの脈拍変動ですが、大きな山が一つ、それに続いて高さは同じくらいだけど、すそ野の狭い、つまり短時間の山が二つ見られますね

このレッスンでは、32カウントの左右対称なコンビネーションを一つと、16カウントの左右対称なコンビネーションを二つ作って、それぞれを基本動作から段階的に組み立てていき、完成させています

最初の大きく長い山が32カウントのコンビネーションを、そして後半の短い二つの山が16カウントのコンビネーションを組み立てていく過程での脈拍変動を表しています

各コンビネーションともに、比較的シンプルで強度の低い動きから始め、そこに段階的にアレンジを加えて強度や難度を上げていき、さらに異なる動きを複数組み合わせるという過程を踏みますが、いずれも一定上の脈拍数を保っています

①を完成させた後、一度レッスンを中断して水分補給を促していますが、そこでもそれほど大きく脈拍が落ちることはありません

そして、注目してほしいのは、最後の山です

ここでは完成した3つのコンビネーションを①②③の順に繰り返しています

もう少し詳しくいうと、①の右足スタート32カウント、①の左足スタート32カウント、以下同じように②と③を右左左右対称に続けて行うので、一巡するのに128カウント費やします

音楽のスピードが140拍/分だとすると、一巡するのに1分弱ということになります

このレッスンでは、6セットノンストップで繰り返したので、5分半ほどになります

私はこの時間を非常に大切にしています

なぜなら、ここは一番有酸素運動として高い運動効果が期待できるところだからです

グラフを見てわかるように、コンビネーションを組み立てていく過程というのは、ある程度の運動強度は保てているものの、やはり一時的に強度が下がる時間ができてしまいます

出来上がったコンビネーションの繰り返しは、個々の動きを見ればそれぞれ強度の高いものもあればそうでもないものもあり、それらの強度の異なる動きを規則正しい順序で連続的に繰り返してくことは、結果的には一定の運動強度が維持された状態、つまり定常状態を生み出します

ジョギングに例えれば、起伏のないコースを一定のペースで走り続けるような状態です

これが理想的な有酸素運動なのは、言うまでもありませんね

限られた時間のレッスンの中で、どれだけこの定常状態を作り出せるかが、効果的なプログラム提供につながると思います

なので、私はレッスンの最後のこのコンビネーションの反復の時間を一番大切にしています

コンビネーションに凝りすぎて、完成に時間がかかってしまい、予定のコンビネーションが完成したらそれでおしまい

ではもったいないですから