トランスミッション

先月、日本体育学会大会で大阪に行ってきました
地続きの場所ならどこでも車を運転して行ってしまう私、ちょうどこの学会前後がオフだったのもあり、大阪行きも当然車で行くことを考えていました
往復1000㎞を軽く超えるロングドライブ、そして初めて車で行く土地ということで、通勤仕様でナビ付きのウイングロードでいくつもりでした
ところがその数日前、ウイングロードが走行不能に!
家の近所の短い坂道を登り切った一時停止で、左右の安全確認後、発進しようとブレーキから右足を離しアクセルを軽く踏んだにもかかわらず、車が後退し始めました

実は数日前にエンジンルームからいつもと違う変な音がしているのには気づいたのです
ただ、いつもお世話になっている日産の販売店が夏季休業だったので、わざわざ隣県の日産販売店に勤める友人を訪ねて診てもらっていて、その時の見立てはトランスミッションから音が出ている、とのことでした
新車で購入してからもうすぐ9年、18万キロを走って来たことを考えれば、そろそろ寿命を迎えてもおかしくない部品です

近いうちに交換しないと、と考えていた矢先に動けなくなってしまいました
翌日から営業再開した販売店に引き取りに来てもらい、それから2週間の入院で新しいトランスミッションを移植され、今は元気に走っています

そんなわけで、大阪へは2号車のマーチで行ったわけですが、狭くて足回りの硬いゴツゴツした乗り心地、5速マニュアル、ナビ無しということで、決して楽な運転ではありませんでしたが、便利なクルマに慣れてしまっていた近頃にはない、地図を見ながらドライブするというアナログな楽しみ方ができました

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ところで、今回交換することとなったトランスミッションは、CVT(Continuously Variable Transmission)と言われるもので、簡単にいうと、オートマチックトランスミッション(AT)のさらに進化したものです

そもそも、車になぜトランスミッションが必要かというと、車はエンジンの回転で生じる機械的エネルギーを動力にしてタイヤを回転させて走ります
そのエンジンの回転は、エンジンをかけただけでまだ動いていない状態(アイドリング)ですでに一分間に1000回転弱で回っています
そして、スポーツ走行仕様の特別なエンジンでない限り、エンジンの回転数の上限は6500~7000回転に抑えられています
これ以上の回転数で回し続けることはエンジンへの負担が大きいため、リミッターというシステムによって、どんなにアクセルを踏んでも上がらないようになっているのです
つまり、エンジンの回転数はどんなに頑張っても、アイドリング時の6~8倍程度までしか上がらないのです
ちなみに、高速道路などを時速100㎞程度で走っているときのウイングロードのエンジンの回転数は、2000回転くらい、マーチの場合は3000回転くらいです
アイドリング時にすでに1000回転弱まで回っているエンジンが、これだけの高速走行なのに2,3倍までしか上がらないというのは不思議ですね

そこで大事な役割を果たすのがトランスミッション、つまり変速機です
エンジンの回転による出力がタイヤの回転に伝わるまでには、いくつかの部品を経由しているのですが、その中に歯車みたいなものがあると思ってください
その歯車のをかけかけを行うのがトランスミッションです
歯車のサイズを変えれば、エンジンの回転に対するタイヤの回転数の比を変えるとができます
これがいわゆるギア比です
スポーツタイプの自転車に乗る方はよくわかりますね

もともと、この歯車の架け替え、つまり変速は、手動で行われていました
今では極めて少なくなった、マニュアルトランスミッション(MT)です
AT限定免許なんて存在しなかった時代に免許を取得した私は、いまだに乗っていますが(笑)
MT車では、左足でクラッチペダルを踏んでいったんエンジンの動力がタイヤに伝わるのを遮断し、その間にシフトノブを操作して次の段階のギアに入れ替え、再びクラッチペダルを離して動力をつなぎ、アクセルペダルの操作で適切な走行スピードにするのです
ギアを変えるたびに大きく回転数が変化するので、ドライバーはもちろん同乗者にもその際の変速ショックが伝わります
また、変速の判断は全てドライバーが行うので、その良し悪しは燃費や乗り心地に影響します

これを全て自動で行うように開発されたのがオートマチックトランスミッション(AT)です
クラッチをつなぐという、コツをつかむのに少し時間のかかる操作が必要なくなった分、運転は簡単になりました
しかし、変速が自動で行われる以外はMTとあまり変わらないので、多少の変速ショックは生じます
特に初期のAT車は3段階しかギアがないものあったので、ギアが変わるたびに大きな回転数の変化が生じていました

このATをさらに進化させたCVTは、無段階変速機と呼ばれます
歯車の架け替えのような作業を介さず、様々な速度域に応じて動力を遮断することなく最適なギア比で走行することができるのです
このCVTのおかげで、燃費や乗り心地は格段に良くなりました
最近の国産車の多くは、このCVTを採用しています
ちなみに、運転操作はAT車と全く変わりませんので、AT限定免許で運転できます
私のウイングロードのトランスミッションも、このCVTです

今回の故障を機に、CVTについてちょっと調べてみました

http://car-moby.jp/39911

マニアックな内容ですので、ご興味ありましたらご覧ください

さて、本題はこれからで、この車の変速システムを、人間のエネルギー供給系に当てはめてみました(笑)

私たちの身体が動くのは、筋肉が収縮して関節運動を引き起こすからですが、この筋肉の収縮にはエネルギーが必要です
直接筋収縮に関わるエネルギーは、ATP(アデノシン3リン酸)と言われる物質が、リンを一個放出してADP(アデノシン2リン酸)に分解されるときに生じるエネルギーのみです
ATPは筋肉中に存在しますが、その量に限りがあるので、運動開始数秒後にはなくなってしまいます
ADPは同じく筋肉中に存在するクレアチンリン酸(CP)からリンをもらって、再びATPになりますが、CPの量には限りがあり、数秒間でなくなってしまいます
このエネルギー供給システムを、ATP-CP系と言いますね

もう少し長く運動を続けようと思った場合、新たにATPを作り出さなければなりません
ここで、ブドウ糖の出番です
ブドウ糖を筋肉中にある酵素の働きで分解し、ATPを作り出します
分解されたブドウ糖は、ピルビン酸という物質に変化し、さらに酸素の供給がないと乳酸となります
これは、解糖系と言われるエネルギー供給システムです

ところが、解糖系に頼って運動を続けていると、乳酸が蓄積してきて、筋疲労が生じやがて動けなくなってしまいます
普通の人なら、せいぜい1分~1分半程度でしょう

そこで、さらに運動を続けるためには、呼吸で取り入れた酸素を使ってピルビン酸からたくさんのATPを作り出します
これを酸化系といいます
酸化系では、ブドウ糖の分解で生じたピルビン酸だけでなく、脂肪からATPを作ることもできます

ATP-CP系、解糖系、酸化系
この3つのエネルギー供給システムが、私には1速、2速、3速に思えてしまうのです(笑)
もちろん、マニュアルトランスミッションではなく、全て自動で行われます
どんなに運動強度が急激に変化しても、それに応じて最適なギア比でATPを供給してくれる、優れたトランスミッションです

ちなみに、私の本職であるエアロビクスやステップは、常に3速キープですね
しかも、そんなにエンジンの回転数をぶん回さないで走れる、時速50~60㎞くらいかな?(笑)

 

長々と、車と人の身体のしくみついて、思いのままに綴りましたが、最後までお読みくださってありがとうございました