言葉の一人歩きその①

週一回非常勤講師として、日大薬学部でスポーツ科学実技という授業を担当しています

私の担当種目はフィットネストレーニング、いわゆるジムでのトレーニングです

 お隣の理工学部の体育館にあるジムをお借りして、学生達に各自の目標設定をしてもらい、その目標に見合ったトレーニングを実践するという授業です

学生達は毎回の授業毎に、実践したトレーニング内容やその日の感想を、トレーニング日誌に記録しています

半期の授業なので、前期もそろそろ折り返しの時期を迎え、先週の授業の際にそのトレーニング日誌を回収しました

 オフの今日は、約60名分の日誌をチェックし、一人一人に簡単なコメントを書きました

 

その作業中気づいたことが

 

トレーニング日誌には、施設にあるエアロバイクやトレッドミルなどはカーディオトレーニングとして、ウェイトトレーニングマシンはレジスタンストレーニングとして、それぞれ実施した強度や時間または反復回数を記録するようになっています

また、それ以外にスクワットなど自体重でのトレーニングについては、その他の項目で記入するようになっています

その記録の中に『体幹トレーニング』と記入している学生が少なからずいました

いったいどんなトレーニングをしていたのか?と、最近の学生達のトレーニングの様子を思い出してみると

 

思い当たりました

 

うつ伏せから両肘を床につき、脚をそろえて爪先をたて、肘と爪先の3点支持で体をまっすぐに保つという、体幹のスタビリティトレーニングです

 

 私は教えた覚えはないのですが、おそらく多少トレーニングに興味のある、あるいは高校時代部活でやった経験のある学生の一人がやり出したのを、他の学生も真似し出したのだと思います

 

体幹トレーニングといえば、最近はアスリートのトレーニングの一つとしてテレビなどで取り上げられることが増えましたね

体幹トレーニングに特化した、トレーニング本も出版されています

 そのためか、どうも最近この『体幹トレーニング』という言葉が一人歩きしている気がしてなりません

 

そもそも体幹とは?

その字の通り、腕や脚を木の枝に例えた時の幹の部分、つまり胴体の部分を表します

 そのトレーニングとなると、この胴体部分の筋肉を強化したり、胴体部分の主な骨格である脊柱の運動や安定性に関わるトレーニングと解釈できます

つまり、昔ながらの腹筋や背筋トレーニングも立派な体幹トレーニングなのです

それが、近頃は『体幹トレーニング』というと、何やら従来のトレーニング方法とは一線を画した、新しいトレーニング方法のような匂いを放っているような気がしてしまいます

 

本来なら、昔から行われている腹筋背筋、アブドミナルやバックエクステンションマシン、ダンベルを持って行うサイドベント、さらにはピラティスなども、みんな体幹トレーニングなんですけどね

腹筋台で一生懸命お腹を鍛えている人に向かって

お前、これからは体幹トレーニングをやらなきゃだめだぞ

なんて言い出す人が出ないことを祈ります