心に負った傷は優しい涙で治してく

陽気に浮かれて『楽しみ~♡』を連呼するゆめとは真逆に、心の中で「今回は失敗に終わる」と予想しながら胸がチクチクしていた私。

案の定、本人史上最低の出来に悔し涙が止まらなかった2019年のピアノ発表会。

正確に、そして厳しいことを言えば、悔し涙ではなく、後悔の涙。

悔しいという言葉は、本気とセットだと思っています。

少なくとも今夏、彼女は不真面目で、怠惰で、どうしようもなく半端でした。

何度も、練習時間と練習量の少なさ、取り組む姿勢の適当さに口を酸っぱくして諭すも、

『ちゃんとやってる』その次に『ママなんて弾けないくせに』と言って除けた。

「弾けなくても何かをやり遂げるためには何が必要かはわかるし、愚か者の末路の予想はつくよ」と鬼のような言葉をかけるも、彼女には響かなかった。

だから、一度本当の意味での【失敗】を経験することが必要だと思っていました。

本気で我が子の失敗を願う親なんているはずもなく、演奏前から震えていた私です。

スタンバイ前のこの笑顔はどこへやら…

終わった後はどんより曇り空が心模様を表すかのごとく、複雑な帰り道でした。

手を強くぎゅっと繋ぎ、

ポツリポツリと彼女が言った言葉は、

『今度から練習時間を増やしてちゃんとやる』

『神様に教えてもらった』

そして

『次のレッスンで来年の発表会で弾く曲を先生と相談して決める!すぐに練習を始めたい!』

『今日のこの悔しい気持ちを忘れるわけじゃないけど、いい曲弾いて塗り替えたい!』

でした。

おどけてみせたりしてたけど、内心本当に傷を負っていたと思います。

演奏後に舞台裏から戻ってきた彼女は真っ赤な目をしていて、拭っても拭っても涙が勝手に落ちてくる…

トイレに行きリセットしようとするも、終始涙ぐみ…

プログラムの最後、発表会10回記念で演奏した2人の、心に溶け込むような素晴らしい音色を聴きながら、やっぱり静かに頬に涙をつたわせて泣いていました。

拭っても拭ってもこぼれ落ちる涙を見て、

今回の経験を糧に強くなれ!と私は私で心の中でそっと呟いていました。

ビデオを撮りながら手が震えていたけれど、

横でシクシク泣くゆめを見て心はズキズキ痛かったけれど、

予想通りの結果に涙を流すのは、何だか母としては違う気がしてぐっと堪えていました。

そう、あの時までは…

先生がね、人目もはばからず泣いているんです。

「私の配慮が足りなかった。昨日のレッスンでは完璧だったんです。だから私もすっごく悔しくて…」と、ボロボロ涙を流しては拭い、また目から涙が頬をつたって…

解散後とはいえまだ客席にほとんど人が残っているのに、目を真っ赤にして泣いてくれる先生を見てゆめが泣き、そして私も泣いてしまいました。

すごく素敵な先生です。

帰り道、

「ゆめの演奏がうまくいかなかったことに責任を感じてゆめの重い気持ちを半分背負ってくれたり、悔しいって泣いてくれる先生なんて他にいないよ。先生が先生でよかったね!」と話しました。

彼女はこくりと深く頷き、感謝しているようでした。

毎年演奏後には必ず先生と記念撮影をしていました。

今年はありません。

先生もゆめも泣いていたから…

3人で泣いた、ちょっぴり苦くて優しい想い出は心の中にしまい、来年リベンジします!

『神様が教えてくれた』

傷つき、気づき、はじめての(自分がつくった)失敗を経験した彼女が、また大きく強く成長していくことを願って。

来年は先生と笑顔で記念撮影できますように。

mana