鬼よりも化け物な人間になるべからず

2022.08.28

ゆめが所属する劇団でお世話になっているお姉様方が出演された《赤鬼》を観てきました。

ゆっくり行ったつもりが、開場後すぐに入場し２番目だったので、最前列の中央、顔のシワが見えるくらいの距離でじっくり食い入るように見せていただきました。

控えめに言って、
ものすごくものすごく面白かったです❗️

ミュージカルや舞台はたくさん観てきましたが、その中でも群を抜いて面白かった⭐️
（贔屓目全くなし）

耳の関係と会場の音の響き方で聞き取りにくい場面もありましたが、気になった【噛み】は２箇所だけで、膨大な文字数を早口で捲し立てるように言わなければいけない台詞も大きくしっかり広がるように聴こえてストレスがありませんでした。

これってとてもすごいことで、
音がこぼれてしまうとストーリーはぶつ切りになり、一気に現実に引き戻されてしまいます。

引き込まれ、一色に染まっていく世界観と会場の一体感が心地よく、没頭できました。

ところどころの笑いが面白さに弾みをつけて、
陰と陽の緩急が時間の感覚を狂わせ
あっという間に終わってしまいました。

たった８人で紡ぐ物語。
同じ衣装・同じビジュアルなのに、そこには何人も別の演者がいるような錯覚を起こすほどの圧倒的な役の演じ分け。
役の性別は男女逆転しているのに、
違和感も雑味もないのが素敵すぎる。

【光焔万丈】という言葉がぴったりなほど、
物語自体も、物語の中で繰り広げられる井戸端会議も(笑)素晴らしかったです👏

🤫大人の言葉🤫が満載で(笑)
中学生のゆめがどこまで理解し
何を思いながら観ていたかはわかりませんが、
この世界の住人が抱える闇や光の両極を13歳なりに受けとめ考えてくれていたら嬉しいなぁ。

・

どんな物語もそうですが、
受け取り方は千差万別。

私が理想とする終わり方ではなかったけれど、
現実は幸と不幸に綺麗に二分するとは限らず、
誰かにとって幸でも、
誰かにとっては不幸であったり…
その逆もまた然り。

はっきりわかってしまうことが
不幸であったり、

曖昧で不確かでわからないことのほうが
幸せだったり、

わからないこともわからないくらい
自分の脳や心を侵すこともないほどに
気にもとめないことが
楽であったり、、、

物分かりのいい人も
どこか抜けてしまっている人も
それぞれに生き方があり、
それぞれに損得があります。

どんな形であれ
心をもって生きることが大切で、
心を失った時
それは死を意味するのではないでしょうか。

心がそこになくとも体があれば【生】？

いやいや、
たとえそこに体がなくとも
誰かに心が継承されていれば
それは立派な【生】なのではないか。

ともすれば、望んだエンディングにならなかったのがやっぱり残念で、私の心は『不幸』だと言っているけれど、、、

想いを繋ぎ生きた後
なんとなく命が果ててしまうより、
自分の意思で生を終わらせ
愛を自分だけのものにしたのは幸せか。

・

文芸評論家の馬場あき子さんは
『鬼の研究』の中で、鬼の系譜を５つに分類しています。
👇
①神道系
日本民族学上の鬼（祝福にくる祖霊や地霊）
②修験道系
山伏系の鬼、天狗
③仏教系
邪鬼、夜叉(やしゃ)、羅刹(らせつ)、地獄卒、牛頭鬼(ごずき)、馬頭鬼(めずき)など
④人鬼系
放遂者、賎民、盗賊など、人生体験の後に自ら鬼となった者
⑤変身譚系
怨恨・憤怒・雪辱などの情念をエネルギーとして復讐をとげるために鬼となった者

どれにも当てはまらず、
人間らしく笑い、
そして愛を与え、愛を遺した《赤鬼》

この世界に溢れる非人道的な生き物こそが
赤鬼であり、
人間とはどんな生き物であるべきか…
そんなことを13歳（ゆめ）が考えてくれていたら
嬉しい。

そして、
お姉様方の全身全霊を尽くした演技を見て、
自分の舞台に向けて心を燃やしてくれていたら
嬉しい。

・

人を理解しようと努めることはとてつもなくエネルギーがいることだけれど、
互いに寄り添うことで世界は拓けてくる。

エネルギーを削らずにいるならば、
せめて誰のことも傷つけずにいるべきだ。
（愛が強すぎて傷つけてしまう場合もあるかもしれないけれど、、、それはまた別の話）

・