そんな回答はいらない
教室の生徒の保護者の言葉を時々思い出します。
「社会人になってから職を変えることなく同じ仕事を続けてきて、私にはこれしかできないんです。職場の中の世界しか知らずに生きてきたので、子どもたちに教えられるものがないんです。いろんなことに挑戦して、どんどん世界を広げていく子どもたちを見てすごいなぁって。私にできなかったことだから。ほんと、私ってただ同じことを繰り返して同じことしかしてこなかったから。働く楽しさも教えられないし、働く私を見て子どもたちがどう思っているのかなって…」
私にとってその職業は私なら一年も続かないであろう苦手分野で、毎日ひたすら画面と紙と対峙しながら大量の数字に囲まれて過ごす時間は考えただけで頭がくらくらするし、想像する千日回峰行と同等レベルの過酷なものです。
ずっと職を変えずに毎日同じ仕事を続けてきたなんて尊敬以外のなにものでもなく、これしかできないではなくそれができることが素晴らしいわけで、楽しさは伝えられずとも人の生活を支える尊い仕事をしている母を見て子どもたちは誇らしく思っているに決まっています。
これまでたくさんのご家庭とご縁をいただきましたが、群を抜いて律儀な方でした。
礼節を重んじる母の姿をそばで見ていた子どもたちは社会に出て同じように振る舞い、今時の若者は…とは真逆の言葉で褒め称えられていることでしょう。
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中・高・専それぞれの友人たちもいろんな進路を辿りました。
選んだ学校や学部・学科が就職に直結した友人は意外と少ないですが、専門職に就き活躍している友人はたくさんいます。
勤続年数でいうと20年もしくは16年ほどになりますが、一昔前では当たり前だったそれも現代では「すごいね」と言われたりします。
何年か前に「3年サイクルでやりたいことが変わり、職を変え、アップグレードすることを望む人が増えていく時代で教育のカタチをどう変えていくのか」をテーマに時流に合わせた経営戦略についての講座がありました。
成長に合わせて引っ越しを続けるヤドカリのように、能力を育んだら場所を変え、違うスキルを身につけたらまた別の場所で力を培いつつ新たな力を求めてさらに別の場所へ・・・そうやって環境変化と常に新鮮な自分を楽しみながら生きる人が増えていくという前向きな話でしたが、転職する人が必ずしも同じ理由とは限りません。
理由は違えども、いま身を置く環境でどれだけのものが用意されていてどれだけのものを手に入れられたのか…個人差はあれど、得られたものがゼロというのは考え難く、得たものをどれだけ活かせるのかで未来は大きく変わるような気がしています。
点と点にしてしまうのか、線で結ぶのか。
点で分けて切り捨ててしまったら、その時間の価値は半減してしまいます。
いままで重ねてきた時間の中で得たものは引き出しの中にちゃんとあるはずだから、それを大切にできたらいいですよね。宝の持ち腐れにすることなく。
友人たちを見ていて、これはけして悪い意味ではなく、学校・学部・学科選びで人生が決まるなんてことはなく、人生の通過点に過ぎないなと思います。
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私が大好きな作品【四月は君の嘘】で、
苦しそうか
困ったな
苦しいのは当たり前なんだけどな
僕は海図のない航路を行くんだろ
挑戦するのも 生み出すのも 苦しいよ
でも充実してる
という台詞があります。
こんなふうに思える日々を過ごせたら素敵だなって思います。
受験生である娘のことを応援してくださる人たちは、みな口を揃えて同じことを言います。
これを読む娘が調子にのるといけないので書きませんが(笑)
私もそうだと思っているので特に将来の心配はしていませんが、問題は本人が自覚しているかで…
周りを見渡せば、農家の祖父母、専門職一筋の祖父、どんな仕事もこなすオールラウンダーの祖母、転職経験ありまくりの営業一筋の父親、個人事業主の母親がいて、家族以外に関わる大人みんながいろんな働き方をしているのを見ているわけだから、いろんな大人を参考にしながら自分だけの海図を描いてほしいのです。
30代・40代、離職する友人・知人が増えてきました。
私からすると社会と人に直に貢献できる尊い仕事なのにもったいないなぁと思ったりするのですが、さらにさらに幸せになるための選択であれば応援したいし、違う世界でキラキラする姿を見れたら嬉しいわけで。
2024年現在で働く世代の大人が海図の書き換えを楽しんでいるのだから、子どもたちが大人になる頃はもっと自由です。
楽しく過ごしながら自分の可能性は無限だと信じられる環境に身を置いて、より多くのことに挑戦し、より多く「はじめまして」の自分に出会ってほしいです。
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【この学校を選んだ理由はなんですか?】の質問につまらない回答をしようとしている娘を見て、進路に関しての思考を窮屈にさせていたんだなと反省。
もっと自由でいいのよ。
ママなんて、
理由1:担任の先生が決めてくれた
理由2:当時好きだった男の子が行こうとしていた
理由3:制服が可愛いって聞いた
この3つで入ったわけだし。
まさか面接の時にそんなことは言えないけども。笑
高校の先生が望んだ進路でもないし、両親が望んだ進路でもなかったかもしれないけれど、ママはいま高校卒業後から自分が描いてきた海図に大満足してるよ♪
誰もこの海図を見て同じ冒険はできないんだから♪
ゆめはゆめの好きにしたらいい。
自分の歩む道を正解にしたらいい。
毎日送り迎えはやだけど。笑
可愛い制服のところにしたらいいんじゃない?
THE青春ができるところにしたらいいんじゃない?
イケメンがいそうなところにしたらいいんじゃない?
最悪なのは、自分が自分じゃいられなくなる学校を選ぶこと。
「この学校なら自分のことを大好きでいられると思いました!」って言われたら、私が面接官なら合格のはんこを即押すね。
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来週は進路面談。
なんてことない道を(なんかいいな)って見つけられる毎日をさ、「なんかいいね」って言える余裕と素直さをもってさ、『なんかいいよね』って一緒に笑える人と過ごしてさ、《なんかいい》を積み重ねていけたらさ、最高なんじゃん?
そういう高校生になってくれたら嬉しいな。
mana