【坂の途中の家】を観て

【坂の途中の家】は角田光代さんの小説です。

2011年から連載が始まり、
2016年に刊行、
2019年にドラマ化されました。

ドラマでは柴咲コウさんをはじめとした大好きな役者さんが勢揃いでしたが、現実世界で各登場人物に当てはまる人が思い浮かび、現実にある出来事そのままが映し出した物語だからこそ、感情が揺さぶられ、理性を保つも自分の中の狂気が浮き彫りになり、心がぐちゃぐちゃになる作品でした。

ちょうど今期のドラマ
【海のはじまり】【西園寺さんは家事をしない】
この2作品で、家族とは?母親とは?子育てとは?について考えていたタイミングだったこともあり、それらが線でつながることで余計に苦しさや辛さ・痛みを伴いながらの視聴となりました。

「潜在意識」「無意識」
これらの言葉を用いて人が己を深く紐解こうとすることがあります。

過去の経験や体験によって作り出される、自分で自覚することのない心の深層のことが「無意識」と定義されています。

特に心の不調に寄り添う場面や人を分類したがる場面でこういったことが重要視されることが世に知れ渡った現代だからこそ、育児本に書いてあることが絶対!産前から育児中のすべての時間で親子に関わり指南する立場にいる人からの言葉が正しい!と思い込み、その通りにしなければならないという意識のない呪縛に苛まれながら、子育てで余計な苦労を背負ってしまっている人も多いのかもしれないと感じます。

「脳を賢くするためは◯歳までに◯◯をする」「運動神経は◯歳までに決まる」など生まれた後のことはもちろん、理想の子育てのように謳われる情報は妊娠前からずっと意識下にあり、情報に支配されてしまっているこの世界に生きる人すべてが「いい子育てとは?」「いい親とは?」といったことに関して持論をもっています。

その時々の自分によって物事の見え方や考え方はきっと変わるでしょうし、その時にはその時の尺度でしか物を言えないため、持論なんてものは大したものではないのに、それに嵌めようとする善意のつもりの悪気のない悪意が人と自分をも窮屈な檻に入れ苦しめることになります。

そういう現実が見え隠れしてしまっていることも、少なからず少子化やノイローゼの要因になっているのだろうと思います。

振り返ると、妊娠中に医師や助産師さんに言われることはすんなりと受け入れられました。

出産を母子ともに安全に遂行するためにはその助言が重要で、命に関わることだからこそ守るべきものだと理解していたからだと思います。

では、出産後はどうだったかというと・・・
自由人でした(笑)

いまの歳で初産なら、もっと慎重にもっと神経質になっていたかもしれませんが、生身の人間相手に『絶対』も『正しい』もないと思っていたので、情報を選択し試行錯誤することを選びました。

目の前の娘に全集中!
命の危険や健康危機を回避するための情報は調べましたが、育児本や誰かの子育てブログに目を通すことはありませんでした。

【坂の途中の家】にもあったように、人は誰かの『普通』の中で生きようとすると色々なことが難しくなっていくように思います。

同じ食べ物を同じ時間に同じように食べて同じような生活をしたからといって同じ顔・同じ体型・同じ性格・同じ思考にならないように、誰かの普通は人を形成するために必要なものにはなり得ません。

あくまでも参考にするものであって、
絶対と崇めるものではありません。

『持論の押し付けから始まった、ボタンのかけ違いによって偶発的に起きた様々な出来事の末路は、関わった全ての人間が分かち合うべきもの』といった内容で締め括った作品は、スッキリ晴れやかな気分で見終えることはできませんでしたが、これからの私を見つめ直すきっかけとなりました。

子育てをする者・母親に限らず、子と向き合う時に必要なのは、育児本の中身と子を比較することでも持論に振り回されることでもなく、見つめること。

どうやっても完璧なんてものはないのだから、【子は親の思い通りには育たないが、親のようには育つ】を肝に銘じて、一緒に成長していければよいのではないかと思います。

古くさい時代錯誤な価値観の押し付けは流して(笑)
誰かの普通に合わせることを頑張るのではなく、自分と対峙することで自ずとその時の自分の最適解が見えてくるように思います。

誰かの普通に合わせて万事うまくいくのなら、悲しいニュースひとつない平和な世界の出来上がり。

でも、いつまでもそうならない現実を変えようと踠く結果、また『普通』を強調して同調圧力のようなものが蔓延する、、、

悲しいニュースをひとつでも減らすために大切なのは、人が考えることをやめないことだと思います。

この作品の存在を知らなかった私が今日この作品に出会い、物語のことをこうして綴り、誰かがまた考える…

小説でもドラマでもどちらでもいいですが、多くの人がこの作品に触れ、訴えかけられていることを受けとり、考え、立ち止まり、これまでと違う自分で一歩を踏み出せることを願います🕊🍀

mana

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