嗅覚

パーキンソン病や認知症などの神経変性疾患。
これらの発症前、早期症状として嗅覚の低下があったと数多く報告されています。

主に高齢者が住む家の家事発生理由に
灯油漏れやガス漏れなどがありますが、
こういった危険回避に役立ち、
命を守る大切な感覚のひとつが『嗅覚』です。

鼻の奥にある嗅細胞がにおいの分子を捉え、
その情報が脳に伝わることで
私たち人間はにおいを感じることができます。

嗅細胞ににおいの分子が届かなくなったり、
嗅細胞が変性し脱落すると嗅覚が低下します。

嗅覚は加齢とともに機能が自然と低下します。

これは鼻腔の奥の嗅粘膜でにおいの分子を感知する嗅細胞の新生能力が低下するためだと考えられています。
加齢により抜け毛が増えたり、
肌の再生が遅くなるのと同じ現象です。

男性では60代、
女性では70代から低下が目立つようになります。

嗅覚の低下に男女差がある理由ははっきりとはわかっていませんが、喫煙が嗅覚低下の要因になることから男性の喫煙率の高さが理由かもしれません。

☑️鼻副鼻腔疾患
☑️動脈硬化
☑️糖尿病
☑️生活習慣病
なども嗅覚低下の要因になりますが、
最も強い危険因子は『加齢』です。

アメリカでの大規模調査では、
65歳以上の13.9%に嗅覚低下が認められたというデータもあります。

✅禁煙
✅鼻副鼻腔疾患の治療
✅生活習慣病の改善
✅嗅覚のトレーニング
などを意識して、加齢以外の危険因子に適切に対処することで、機能の低下を最小限に抑えることが可能だといわれています。

週に3回以上汗をかく程度の運動を続けることで10年後の嗅覚低下の危険性が0.73倍に低下したという海外の研究結果もあるので、運動も有効でしょう。

嗅覚低下が運動機能の衰えを招くことも明らかになっています。

運動機能が低下しているサルコペニア(高齢になるに伴い、筋肉の量が減少していく現象)の人と運動機能が正常の人を比較した場合、サルコペニアの人の方が圧倒的に多く嗅覚低下が見られたという結果も出ています。

❌運動量が少ない
❌運動機能の低下がみられる
❌骨粗鬆症
などは認知症の発症リスクを高めますが、
認知症と嗅覚障害も関係が深いことがわかっています。
認知症で起きる脳の病変の影響が、
嗅覚にも及ぶと考えられているのです。

嗅覚が完全消失(脱失)した人の死亡率は、
心不全・脳卒中・がん・糖尿病・慢性閉塞性肺疾患を持つ人よりも高いというデータもあります。

なぜ嗅覚の完全消失が死亡率と関連するかは不明ですが、認知症やフレイルなどの関与があるのではないかと推測されています。

フレイルとは、病気ではないけれど、年齢とともに筋力や心身の活力が低下し、介護が必要になりやすい、健康と要介護の間の虚弱な状態のことです。

嗅覚・聴覚・視覚のうちいずれかひとつの感覚障害がある人と障害のない人を比較すると、15年後の生存率に差があるとの報告もあります。
感覚障害が増えるほど生存率が低下するというアメリカの研究報告もあります。
3つの感覚低下がみられた時は要注意ということを覚えておきましょう。

コロナに罹患して、
嗅覚と味覚に障害が出た人も多いと思います。

においと味は密接に関わっています。

嗅覚の低下から食欲不振になった経験のある人も多いと思います。

栄養不足になったり、味覚が不安定なことによる塩分や糖分過多から脳卒中や心筋梗塞を招くケースがコロナ禍で増えたかもしれません。

嗅覚は
直接的にも間接的にも身体の不調を招き、
命を脅かします。

嗅覚低下を回復させるための
トレーニングがあります。

レモン・ユーカリ・バラ・クローブのにおいのエキスを1日朝晩各1回数十秒ずつ嗅ぐというものです。
嗅細胞の再生を促すと考えられています。

健常な高齢者のほとんどがカレーのにおいがわかるのに対して、軽度認知障害を患っている人のうち30%がカレーのにおいがわからず、アルツハイマー型認知症患者では65%の人がカレーのにおいがわからないという実験結果もあります。
カレーのにおいがわからなくなった時は要注意‼

その他にも、️
要介護未満の人が
墨汁やミカンのにおいがわからなくなったり、

加齢による筋肉量の減少や筋力の低下で歩行障害に陥るレベルまで進行すると、材木・ヒノキ・焦げたニンニクのにおいがわからなくなるということもいわれています。

私たちは何気なくにおいを嗅いでいますが、
嗅覚の状態を確認することは、その後現れる体調変化やいまの身体の状態を知るのに有効です。

命を脅かすほどの大切な感覚であるにもかかわらず、検査されることはなく、意外にも軽視されがちな『嗅覚』

今日からぜひ気にしてみてください🍀

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