ヘム鉄と非ヘム鉄

※一般用語として、食品・食事や体内の栄養素としての鉄を示す場合に「鉄分」という用語が用いられることがありますが、栄養学的には『鉄』を用いるので、こちらの記事では『鉄』と書きます。

体内に存在する鉄の割合は、
【機能鉄】とよばれる
筋肉と血液中のものが約7割
【貯蔵鉄】とよばれる
骨髄や肝臓などに貯蔵されているものが約3割。


【機能鉄】


赤血球のヘモグロビンや
筋肉中のミオグロビンの構成成分です。

主に赤血球のタンパク質であるヘモグロビンの中に『ヘム鉄』という形で含まれています。

酸素と結びついて、全身に酸素を運んでいます。

機能鉄が不足すると、体内に酸素が行き渡らなくなるため、蓄えられている貯蔵鉄が不足を補うために放出されます。


【貯蔵鉄】


肝臓や骨髄・脾臓・筋肉などに
ストックされている鉄です。

体内で生成されます。

機能鉄が不足したときに利用されます。

貯蔵鉄の中には体内の約0.3%という少量で酵素の構成成分となる鉄もあり、エネルギー代謝として重要な役割も担います。

食事により摂取できる鉄は2種類あります。
①ヘム鉄
②非ヘム鉄


ヘム鉄の特徴


✏️主に肉や魚などの動物性食品に含まれます

牛・豚・鶏ともにレバーに多く含まれますが、
牛・豚ならヒレ肉
鶏肉ならモモ肉も鉄摂取にオススメ⭐︎

魚なら、
かつお・いわし・まぐろの
血合いの部分に多く含まれます

✏️タンパク質に覆われているため、吸収阻害されにくく、吸収率が高いです

✏️腸で活性酸素が発生し、便秘や下痢などの原因になることがあります


非ヘム鉄の特徴


✏️卵類・貝類・豆類・緑黄色野菜・海藻類などの植物性食品に含まれます

✏️鉄分子が剥き出しのため吸収阻害されやすく、吸収率が低いです

✏️胃で活性酸素が発生し、吐き気や胃のむかつき・胃痛の原因となることがあります

動物性食品に多く含まれるヘム鉄と
植物性食品に多く含まれる非ヘム鉄では
分子構造が異なるため、
鉄の吸収率が異なります。

ヘム鉄の吸収率は30%、
非ヘム鉄は5%ほどです。

日本人が食事から摂取する鉄の85%は
吸収率の低い非ヘム鉄と言われています。
日本人が鉄不足と言われる理由のひとつです。

1位:パセリ
2位:小松菜
3位:枝豆
4位:ほうれん草
5位:サニーレタス
6位:しそ・大葉
6位:春菊・菊菜
8位:チンゲン菜(青梗菜)
これは、
非ヘム鉄の含有量の多い野菜のランキングです。

パセリはそんなに食べないし、
枝豆・春菊・菊菜は季節ものだし…
と考えると、野菜からの日常的な鉄摂取もなかなか難しいのかなと思います。

非ヘム鉄をできるだけ効率的に吸収するためには、ビタミンⅭと一緒に摂取するとよいです。

厚生労働省の
「日本人の食事摂取基準(2020年版)」より
👇
👨‍🦳男性👨
18~74歳:7.5mg
75歳以上:7.0mg

👩女性👱‍♀️
18~49歳:10.5mg
50~64歳:11.0mg

女性は毎月の月経による出血で鉄が失われるため、意識的積極的に鉄を摂る必要があります。

👵月経のない女性👧
18~64歳:6.5mg
65歳以上:6.0mg

鉄は、
汗と一緒に流れ出てしまう成分でもあります。

たくさん汗をかくと、代謝による流出と合わせて3mg程度がなくなります。

補うためには、例えるなら、
卵であれば3個
あさりであれば8個と
意外と大変です。

それだけ流出が大きいということです。

運動の前後は、水分・塩分の補給と一緒に鉄の補給も忘れずに!

体の中で鉄を貯蔵する役目である筋肉量が増えれば、体が必要とする鉄も多くなります。

鉄不足による貧血が
体臭の原因になることがあります。

貧血により酸素不足になった身体は、
酸素を使わない経路でエネルギーを作ります。

この時、乳酸やアンモニアが汗とともに流れ出てくることが臭いの原因になります。

激しい有酸素運動や筋肉をたくさん使う無酸素運動を長時間した時と同じような臭いが常時する場合は、貧血や鉄不足の心配があります。

鉄が不足すると
❌貧血(鉄欠乏性貧血)
❌集中力の低下
❌食欲不振
❌頭痛
❌吐き気
❌疲れやすい
❌筋力低下
❌血行不良による冷え
❌免疫力低下
このような症状が起こります。

日本人は海外と比べて食事による鉄摂取が少なく、慢性的に鉄不足です。
海外は小麦粉・お米・醤油などに鉄を添加することが一般的だそうです。

鉄鍋などの調理器具が少なくなったことも、
日本人の鉄不足の原因です。
昔は調理器具から溶け出す鉄で摂取を補えていたようです。

生活スタイルや食生活の変化に加え、
ストレスによる自律神経の乱れが
☑️胃酸の低下
☑️アルコール量の増加
☑️偏食
を生み、鉄不足を加速させています。

毎日レバーを食べるわけにはいきませんが、
できるだけ鉄を意識した食事を心がけ
流出と摂取・吸収の差が広がらないようにしたいものです。

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